電話営業で中心になる法律は特定商取引法(電話勧誘販売の規制)と個人情報保護法(営業リストと通話録音の取り扱い)です。事業者向けの取引は特定商取引法の適用除外となる場合がありますが、相手が法人であることだけで一律に除外されるわけではありません。実務では「冒頭で名乗りと用件を伝える」「断られた相手を架電対象から外す」「リストの取得経緯を確認する」「録音の利用目的と保存ルールを決める」の4点を運用に落とすことが基本になります。
本記事は、電話営業に関係する法律の全体像を整理した一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。自社の商材・取引形態に規制が及ぶかどうかの最終的な判断は、弁護士などの専門家や所轄官庁にご確認ください。
電話営業に関係する主な法律
電話を使った営業活動で論点になりやすい法律は、大きく次の2つに整理できます。どちらも「相手が消費者か事業者か」「扱う情報が個人情報に当たるか」で適用範囲が変わります。
| 法律 | 主な規制対象 | 電話営業での主な論点 |
|---|---|---|
| 特定商取引法 | 電話勧誘販売(主に消費者向け取引) | 冒頭の氏名等の明示、断られた相手への再勧誘の禁止、書面交付など |
| 個人情報保護法 | 個人情報を取り扱う事業者 | 営業リストの取得方法と経緯の確認、通話録音の利用目的・安全管理・開示請求への対応 |
特定商取引法:事業者向けなら対象外と決めつけない
特定商取引法は電話勧誘販売を規制の対象としていますが、第26条第1項第1号により、申込者や購入者が「営業のために若しくは営業として締結する」契約は適用除外とされています。このため、法人向けの営業電話は規制の対象外と説明されることがあります。
ただし、消費者庁が公表している逐条解説では、この適用除外の趣旨は契約の目的・内容が営業のためのものである場合に適用されないというものであって、契約の相手方の属性が事業者や法人である場合を一律に適用除外とするものではないとされています。つまり、判断は「相手が法人かどうか」ではなく「その契約が実質的に営業用のものか」で行われます。個人事業主や小規模事業者向けの商材では、この線引きが自明でない場面もあります。
電話勧誘販売に該当する場合、次のような義務・禁止事項が定められています。
氏名等の明示(第16条)
勧誘に先立ち、事業者の氏名(名称)、勧誘を行う者の氏名、販売しようとする商品・権利・役務の種類、契約の締結について勧誘する目的である旨を明示する。
再勧誘の禁止(第17条)
契約を締結しない旨の意思を表示した相手に対して、勧誘を続けること、改めて勧誘の電話をかけることが禁止される。
書面交付など
申込みや契約に際して、法定事項を記載した書面を交付する義務などが定められている。該当する場合は個別に確認が必要。
規制の適用有無にかかわらず、冒頭で社名・担当者名・用件をはっきり伝えることは、受付での取り次ぎ率という実務面から見ても有利に働きます。名乗りを省く運用にメリットはありません。
断りの意思をどう記録するか
再勧誘の禁止が直接適用されない取引であっても、断りの意思を示した相手に繰り返し架電することは、苦情や関係悪化に直結します。実務上は「断られた」という結果を記録し、次回以降の架電対象から機械的に除外できる状態にしておくことが重要です。
ここで見落とされやすいのが、誰が断ったのかという区別です。受付段階で「営業はお断り」と言われた場合と、担当者に取り次がれたうえで担当者本人が断った場合とでは、意味合いが異なります。前者は担当者の判断を経ていない可能性があり、後者は明確な意思表示です。架電結果を段階に分けて記録しておくと、除外すべき相手とそうでない相手の切り分けがしやすくなります。
個人情報保護法:営業リストの取り扱い
法人の代表電話番号のように、特定の個人を識別しない情報は個人情報には当たりません。一方で、担当者の氏名、個人宛のメールアドレス、携帯番号などが紐づく情報は個人情報として扱う必要があります。
注意が必要なのは、外部から購入・譲受したリストです。個人情報保護法は個人情報を適正な方法で取得することを求めており、第三者から個人データの提供を受ける際には、提供元が誰か、どのような経緯で取得した情報かを確認し、記録を作成・保存する義務が定められています。提供元の取得経緯が不明なリストをそのまま架電に使うことは避けるべきです。
リストの集め方・整備の実務については営業リスト(架電リスト)の作り方も参考にしてください。
通話録音の扱い
通話の当事者が、自ら参加している通話を録音すること自体は、日本では一般に違法とは解されていません。相手の同意がなくても、当事者による録音は可能とされています。
ただし、録音データが個人情報に該当し得る点は別の論点です。通話内容から個人が特定できる場合、その音声データは個人情報として扱う必要があります。個人情報保護法上は、利用目的をできる限り特定して本人に通知または公表すること、安全管理措置を講じることが求められます。また、保有個人データについて本人から開示を求められた場合には、原則として応じる必要があります。
実務では、次のような運用を定めておくと論点が整理しやすくなります。
- 録音の告知:通話冒頭で録音している旨を伝える。法律上一律に義務づけられているわけではありませんが、後のトラブルを避けやすくなります。
- 利用目的の明示:品質向上・応対内容の確認など、目的をプライバシーポリシー等で公表する。
- 保存期間とアクセス権限:どれだけの期間保存し、誰が再生できるかを定める。
- 開示請求への対応手順:請求を受けた際の窓口と確認手順を決めておく。
なお、「録音していない」と説明しながら実際には録音するなど、相手を欺くような取得方法は、適正取得の観点から問題になり得ます。
AI電話を使う場合に追加で整理しておくこと
AIが架電・応対を行う場合も、適用される法律そのものは人が架電する場合と変わりません。事業者として何を伝え、どの情報をどう扱うかが問われます。そのうえで、AIを使う場合は次の点を運用ルールとして決めておくと整理しやすくなります。
| 項目 | 決めておくこと |
|---|---|
| 冒頭の名乗り | 社名・用件をスクリプトの冒頭に固定で含める(省略できない構成にする) |
| 断りの検知 | 断りの意思をどの発話で判定し、どのステータスで記録するかを定義する |
| 除外リスト | 断られた番号を次回以降の架電対象から外す運用を設ける |
| 録音・文字起こし | 保存期間、アクセス権限、利用目的の公表内容を定める |
| エスカレーション | AIで対応しきれない内容を人に引き継ぐ条件を決める |
アポトレールでは、全通話を録音・文字起こしして残せるため、実際に何を話したかを後から確認できます。架電結果は受付段階と担当者接続後の段階に分けて記録されるため、誰が断ったのかを区別したうえで対象から外す運用を組み立てられます。料金は初期費用0円・月額74,800円からのクレジット制で、月単位の利用が可能です。